アメリカのオバマ大統領が、発売中の雑誌『ニューヨーカー』のインタビューで「大麻にアルコール以上の危険はない」と発言したことが波紋を広げている。
オバマ大統領は、このインタビューの中で「何度も紹介されている通り、私も子どもだった頃に大麻を吸ったことがある。悪い習慣だという点では若い時から大人になるまで長年吸っていたたばこと大差ない。アルコールよりも危険が大きいとは思わない」と語っている。
その一方で「勧めようとは思わないし、自分の娘たちには悪い考えであり時間の無駄で、あまり健康的ではないと言っている」と釘を刺したが、高校時代に飲酒喫煙、大麻、コカインを使用していたと自伝で告白しているオバマ大統領にとって大麻は特別忌むべきものではないようだ。
アメリカでは連邦法によって大麻(マリファナ)が乱用性の高い薬物に指定されているが、その一方で数多くの州が独自に医療用大麻の使用を合法化している。また、コロラド州は今年から酒やタバコと同様にマリファナを嗜好品として解禁し、初日で100万ドル以上の売り上げがあったとされ、大麻を新たな観光の目玉にしようという動きが広がっている。約1000人を対象にしたアメリカの世論調査では、大麻の合法化について全体の49%が「賛成」、48%が「反対」と意見が真っ二つに割れ、約半分が解禁を支持していることになる。
オバマ大統領は連邦法の変更は支持していないと強調したが、この一連の流れを受けての事実上の大麻容認発言といえるだろう。日本人の感覚からすると、驚くべきことだが…。
「一部の解禁論者が言うような『大麻は無害』という説はウソ。しかし、その害は呼吸器官へのダメージや脳神経への影響、カフェインと同程度の依存性などといったものであり、オバマ大統領の言葉の通り『酒やタバコと大差ない』ことが研究で明らかになっています。だからこそ、アメリカで嗜好品として解禁されることになったのでしょう」(大麻に詳しいジャーナリスト)
アメリカの大麻解禁は日本でも大きく取り上げられ、今まであまり日の当らなかった国内の大麻解禁論者たちは勢いづいている。だがそれは一部の話でしかなく、大多数は無関心なのが実情だという。
「最近の日本では大麻に興味を抱く若者が減っています。以前はフェスやクラブで大麻の甘い香りがすることは珍しくなかったが、最近の若者は覚せい剤と同列のイメージを抱いており、海外旅行をしても全く手を出さないという人が大半。日本では覚せい剤もヘロインもコカインも大麻も一緒くたに『人間やめますか?』というイメージで禁じられたため、一部の不良やジャンキーを除けば一般人の興味の対象外になっているようです。大麻解禁運動やデモ活動でも、不良やジャンキーのような連中が目立ってしまうため、一般の人は近寄りがたい存在になっている。そもそも、最近の若者は酒やタバコすらやらないんですから当然といえば当然の話です」(前同)
“若者の大麻離れ”という現実が見えてきたが、大麻はヒッピー文化と密接な関係があったため、今でも60~70年代に青春を送った世代は解禁論を熱く語る人が少なくない。だが、それが「大麻=古い世代のアングラ趣味」という印象になってしまい、若者の興味を失わせる要因になっている可能性もありそうだ。また近年、脱法ドラッグが若者の間で急激に広まったことも国内の大麻解禁論が盛り上がらない原因になっているという。
「ハーブと呼ばれているタイプの脱法ドラッグは、大麻に似せた成分を化学合成したものですが、禁止薬物は使用していないため合法。そんなものがネットでも繁華街でも簡単に買えるのに、わざわざ大麻に手を出す必要がない。ですが、成分が分かっている大麻と違い、ハーブは販売業者ですら何が入っているか把握できていない。規制をくぐりぬけて効果の高い成分にするため、かなり人体に有害な物質が使われている場合もある。『逮捕されない』からと目先の安全に目がくらんでハーブを常習していると、とんでもないしっぺ返しを食うこともあります」(ドラッグ本ライター)
近年はハーブの乱用による死亡事故や大事件が頻発している。日本人が大麻に拒絶反応を示すのは当然ともいえるが、その代わりに一部の若者たちがキケンな脱法ドラッグに手を出してしまうのも考えものだ。ハーブがはびこるくらいなら大麻を解禁した方がマシ…というのも暴論ではないのかもしれない。(佐藤勇馬)
画像引用元:Weed Farmer(Androidアプリ)