2月12日、アイドル界の異端児とよばれる女性6人組グループ「BiS」が、新宿ステーションスクエアでフリーライブを開催。7月8日の横浜アリーナのライブを最後に解散すると発表した。かねてから目標にしていた「日本武道館で解散ライブ」を諸般の事情で断念することになったBiSだが、武道館よりも収容人員の多い横浜アリーナで有終の美を飾ることになった。
この日のフリーライブも超満員。最近はテレビの全国ネット出演も果たすなど人気が高まっているBiSは、YouTubeで150万PVを記録した「全裸ミュージックビデオ」や世界的デザイナー・コシノジュンコが「終身名誉メンバー」に就任したことが話題になるなど、世間を騒がせる”仕掛け”で成り上がってきたアイドルグループだ。
だが、その“仕掛け”をめぐってフリーライブ前日に関係者とメンバーの間で衝突が起きていた。全国ツアー最終日の11日、リーダーのプー・ルイ(23)が自身のTwitterで以下のように発言したのだ。
「リハの前に丹羽さんに呼び出された。なんのことかと思ったらおとといの君たちは中身がないってことを繰り返して言われた。昨日何を考えたか聞かれた。明日の新宿を埋めるために具体的に考えたか聞かれた。それについては確かに考えられてなかった」
「丹羽さん」とは、BiSのPV制作を手掛けている丹羽貴幸氏のこと。新宿でのフリーライブの集客のために具体的な案がなかったプー・ルイは、丹羽氏から以下のような提案をされたと明かした。
「今日Yahoo!ニュースになれば新宿は埋まるよねって(丹羽氏から)言われた。Yahoo!ニュースかぁーってうーんって言ってたら『そこでお願いが1つある、今日のライブで全裸でダイブしてほしい』って言われました。夢か現実かわからなくなりました」
BiSはライブ中にスクール水着姿で客席にダイブすることがあり、それが”揉めるアイドル”として話題を集めたのは事実だ。今まで過激なパフォーマンスをしてきたからこそ、より話題になるためには「それ以上」を求めたくなるのも理解できる。だが、いくら話題になるためといっても、女の子を全裸で客席に放り込もうという発想からは愛情が全く感じられないし異常である。もし決行されれば警察沙汰にもなりかねず、強要はパワハラに当たる可能性もあるだろう。
だが丹羽氏は本気だったらしく、この言葉に楽屋は「みんな泣いて丹羽さんにつかみかかって殴って」というパニック状態に。これは運営側への断りもない丹羽氏の独断だったようだ。殴られた丹羽氏はそのまま姿を消し、メンバーのファーストサマーウイカ(23)は「おい丹羽逃げるな。引っ掻き回して危なくなったから東京に帰る?何を言ってんの」などと激高。彼女は説得材料として丹羽氏が「全裸ライブ失敗したら、自分もリスクを背負いたいから離婚かもしくは脱いだメンバーに一人50万ずつ払う」と話していたことまで暴露した。
さらには「BiS階段」として彼女たちとコラボ共演しているノイズバンド「非常階段」のJOJO広重氏がTwitterで騒ぎを察知。過激なパフォーマンスで知られる広重氏は「丹羽ってやつか?住所調べといて。そいつの家の前でBiS階段のライブやるわ。バキュームカーを発注しとくから、と言うといて。マジで知り合いあいいるから」と激怒し、メンバー、ファン、周辺関係者を巻き込んだ大騒動となった。
その一方、BiSは過去に運営側とメンバーの衝突を偽装した「騙し企画」をやったことがあり、一部からは「これもそういうネタなんだろ?」「このネタで話題になろうとしてるのが見え見え」などという冷めた声も上がっている。
全裸ダイブは決行されなかったものの、解散ライブの発表は複数の大手ニュースサイトに取り上げられ、念願のYahoo!ニュースにも掲載された。丹羽氏が心配していたフリーライブの集客も超満員という結果。もはや話題を集めるための無茶なパフォーマンスは彼女たちには必要ないのかもしれない。今回の騒動は、丹羽氏が一番近い場所にいながら彼女たちの人気を本物だと信じ切れなかったがゆえに起きた悲劇といえそうだ。(佐藤勇馬)