無断で文字情報を送信していたとして問題となった中国検索最大手「百度」製の日本語入力ソフト「バイドゥIME」の問題。読売新聞の報道によると、全国の29府県市の自治体で合計1000台以上ものパソコンで使用され、中には「住民情報を扱うパソコンなどから新聞2年分の情報が漏えいしていた自治体もある」とのこと。熊本県の場合、「個人情報流出の恐れはあるが、調べ方が分からないので現時点で調査の予定はない」と説明している、という。
多くの自治体では、バイドゥIMEを意図的に入れた覚えは無いというが、一体なぜこのようなことが起きたのか。
「バイドゥIME」が“知らない間に”インストールされた理由は、無料のソフトなどをインストールした際に抱き合わせでインストールされるからだという。
「抱き合わせで別のソフトをインストールさせるフリーソフトは少なくありません。抱き合わせすることで1インストールあたり数十円の収益になるからです。今回、バイドゥIMEが抱き合わせされていたのは動画再生ソフトの『GOM PLAYER』や『RealPlayer』、『キングソフト インターネットセキュリティ』などがありました。インストール時に注意書きは出るのですが、最初からチェックボックスにチェックが入った状態でダイアログが出ますし、慣れていないとそのままインストールしてしまうのも無理はありません」(パソコン雑誌編集者)。
「バイドゥIME」は、中国の検索サイト大手「百度(バイドゥ)」が製作したもので、文字変換をユーザーどうしで共有することで、変換精度をより高めていくことができる日本語入力ソフトだ。固有名詞や流行語などの変換に強く、Googleが提供している「Google日本語入力」なども同じような特徴を持つ。ただし、「Google日本語入力」やATOKは、初期設定では情報を送信しないようになっているほか、ユーザーが送信に同意した場合でも、具体的な入力内容が分からないようにする対策が取られている。
そして今回「バイドゥIME」と同様に問題になっているのがバイドゥ社がAndroid端末向けに提供している日本語入力ソフトの「Simeji」だ。
Simejiの歴史は古く、日本最初のAndroid搭載端末である「HT-03A」が発売される以前からリリースされていた。ソーシャル変換機能のほか「マッシュルーム」と呼ばれるユーザーが自由に作れる拡張辞書を導入できる点で高く評価されており、総計500万ダウンロードを超える人気ぶりだ。もともとはadamrocker氏と矢野りん氏による個人的なプロジェクトだったが、2011年12月に百度が買収を発表。当サイトでは過去の記事で「日本語入力ソフト「Simeji」の数億円買収劇 ツイッター上の反応は!!?」とお伝えしているが、当時の買収額は数億円にものぼると言われている。
今回の騒動を受けてGoogle PlayストアのSimejiのレビュー欄は大荒れだ。
「今までの入力してきたメール、アカウント、パスワードが一言一句残さず中国のサーバーに送られたと知ったとき愕然とした。もう信じられない。二度と使わない。」
「個人情報が流失する?そんなんじゃ、楽しくアプリを楽しめないし、全然信用できないじゃん もう、やらないことにします」
「早くちゃんとした企業がsimejiを買収してくれないかなー。そしたら使いたいですね(^◇^)」
などのコメントが付いている。アプリの説明文では「一部報道で『弊社製品使用時、個人情報が漏えいする』という内容がございますが、弊社では入力語を変換精度向上以外の用途に使用することはありません。また、個人を特定する目的でログ情報を抽出することもございません。」とあり、現在はバージョンアップで修正されたとのことだが、不信感をぬぐえないユーザーはまだまだ多いようだ。
Simejiの買収劇は「アプリ開発者にとっての夢」とも言われただけに、今回のような問題が起きたことは非常に残念だ。使い勝手の良さについては評価している人も多いだけに、ぜひ信頼を取り戻してほしいものだ。(岡嶋佑介)