ドコモが今年の春モデルから取り入れたツートップ戦略。「Xperia A」、「GALAXY S4」の2機種のみに特別割引を設定し、ドコモが全社をあげて販売を後押しする戦略だ。その結果、Xperia Aは発売から1か月で約64万台を販売。GALAXY S4も約32万台を売上げ、シリーズ最速で100万台を超えるペースだという。初心者には端末が選びやすい、というメリットもあり一見この戦略は功を奏したかに見えるのだが、どうやら実情はそうでもないようだ。
当サイトの以前の記事「ドコモ“ツートップ戦略”に国内メーカーが悲鳴」でもお伝えしたように、今回のドコモの戦略でダメージを受けたのは国内メーカーだ。その影響は早くも出始めていて、6月29日には「パナソニックがドコモ向けの冬モデルのスマートフォン投入の見送りを検討している」との報道が出た。理由はもちろん、ドコモのツートップ戦略によって端末が売れなくなったから。パナソニックのスマートフォン「ELUGA」といえば“パナソニックの本気が詰まった端末”とも呼ばれる、非常に評価が高いシリーズ。もし投入が見送りとなれば、ドコモにとっても大きな痛手となることは間違いない。
ネット上でも、
「そらパナソニックも怒るわな、ソニーとサムスンをあそこまで宣伝されたら」
「だからドコモのツートップ戦略なんてやめて欲しかったんですよね。 サムスンGalaxyS4とソニーXperiaだけを推したら、こうなるに決まっとる。 いずれシャープも富士通も同じことを言いだします」
「これでドコモからiPhoneが出てワントップになったら笑えるわw」
などの声が上がっている。
そもそも、ドコモがツートップをどのように決めているか不透明な点も問題だ。スペックなのかブランド力なのかデザインなのか判然としない。6月18日のドコモの株主総会では、株主から「反日のサムスンのものは使いたくない。サムスンとソニーでシェアを広げるのはいいが、日本メーカーも応援して欲しい」と要望が出る場面もあった。
ドコモ側はサムスンについての言及は避けつつ、ツートップを国内外から公平に選んだことを強調した。しかし、携帯ジャーナリストの石野純也氏も、この株主とのやりとりに触れ「実際、ツートップに選出されなかったメーカーからも、不満の声が漏れ聞こえてくる。(中略)ツートップの基準はもう少し明確にした方がユーザーも納得できるはずだ」と述べている。
メーカーの立場から考えれば、せっかく端末を開発してもツートップに入れなければ切り捨てられる、というのはあまりにもリスクが高い。不毛な競争から離脱するべく、提供を見送るメーカーが出るのも仕方がないのかもしれない。NECやシャープ、富士通など、ほかのメーカーの動向にも大いに注目したい。(岡嶋佑介)