歌手でタレントの土屋アンナ(29)の舞台中止騒動が泥沼化の様相を呈し、ネット上でも大きな話題になっている。
土屋が8月6日から主演する予定だった舞台「誓い~奇跡のシンガー」の制作会社が公演中止を決定し、その理由として土屋が稽古を無断で休んでいたことを公表。訴訟も辞さない覚悟で土屋サイドを強烈に批判した。
一時はネット上でも土屋に非難が集中したが、同舞台の原案とされる『日本一ヘタな歌手』(光文社)の著者で車椅子シンガーの濱田朝美さんが「土屋アンナさんは全くの無実」とブログで訴えたことで状況は一変。濱田さんは「舞台化を許可していない」「私の本が原作とは思えないほど内容が異なっている」と主張し、それを彼女から聞かされた土屋が台本に難色を示し、制作側と衝突したことが公演中止の原因になったと明かしている。
濱田さんは舞台化を知った後、監督で舞台制作会社代表の甲斐智陽氏に何度も抗議したようだが「そんなに許可と言うのなら、別に貴女でなくとも、障がい者はたくさん世の中にいる。違う人に頼んでも良いんだよ」と言われたという。
この情報が爆発的に拡散されると、今度は以下のような制作サイド批判がネット上に数多く書き込まれるようになった。
「原作者の許可なく勝手に舞台をやるなんて信じられない」
「障害者をバカにしてる、許せない!」
「業界人って本当にウサン臭い人ばっかりだな」
「濱田さんを守るために動いた土屋アンナさんはカッコイイ!」
甲斐氏の高慢さと非常識ぶりが非難の的となり、土屋を賞賛するコメントが増加中という状況だが、当の甲斐氏はテレビの取材に「ウソつきは土屋側です」と真っ向から反論。さらに、自身のフェイスブックで「濱田朝美さんへ。ブログ読んで、何故あのようなことを書いたのか理解出来ません」と綴り、「 現在あなたには赤沼弁護士という代理人がいて光文社と舞台化の報告に行ったさいに 承諾を得て進めて来ました」と主張。「代理人が立つということは全て代理人を通して行うのが通常で その代理人の承認は濱田朝美の承認なのです」とし、許可はとったと訴えている。
完全に両者の主張が食い違っているが、制作会社の担当弁護士は「1億円以上の損害賠償を土屋さんサイドに請求する可能性がある」と示唆。著者の権利については様々な見方があるが、少なくとも一度は出演を決めた舞台の稽古を勝手にキャンセルしていい理由にはならず、土屋は厳しい立場に追い込まれそうだ。
そんな中、ネット上では今回の騒動が「炎上商法なのでは?」との疑惑も浮上した。濱田さんの元担当で今回の舞台にも「舞台協力」として名前を連ねている光文社のM氏が、ヤラセ疑惑がささやかれた『筆談ホステス』(光文社)などを過去に手掛けており、部数売上を伸ばすために炎上を仕掛けたのではないかというのだ。実際、大手通販サイトでは定価1260円の同書の中古本に最高で6800円の値がついており、需要が急激に高まっている。しかし、これに関しては業界内から早々に疑惑を打ち消す声が上がっているようだ。
「4年も前に発売された本で品切れ中ですし、光文社は再販の予定が無いと明言しています。炎上商法なら、話題になる前から増刷しておかなければ無駄になる。濱田さんが近々新刊を出すという予定もない。舞台制作側も損しかしないでしょう。さすがに炎上商法は見当違いな疑惑でしょう」(出版関係者)
泥仕合になったことで様々な噂が飛び交い、このような疑惑まで発生したようだ。今回の混乱を生みだした元凶として、前出の出版関係者は業界の問題点を指摘している。
「簡単に言えば、出版界や演劇界で横行している“口約束”によって起きた騒動。映画やドラマならまだしも、舞台で正式な契約書を交わすケースは少ない。ほとんどの場合、口約束で企画が進んでいく。担当編集や代理人と口約束し、作者本人は全く知らないという場合もある。それが業界の“常識”なんです。正式な文書がないのだから、トラブルが起きた際に『言った、言わない』の水掛け論になるのは当然。最近は契約書を交わすこともあるが、古い業界人の間ではいまだ口約束が常態化している。この悪習がなくならない限り、今後も似たような騒動は起きるでしょうね」
どちらに非があるのかは何ともいえない状況だが、著者の権利を守る意識が希薄な業界体質にスポットが当たったことは一つの収穫といえるのかもしれない。(佐藤勇馬)