9月11日、iPhoneの新機種「5S」と廉価版「5C」を20日に発売すると発表したNTTドコモ。「ドコモ版iPhone」への世間の期待は大きく、さっそく乗り換えを検討している他キャリアのユーザーも多いようだ。まだ肝心の料金プランは発表されていないものの、ドコモの通信品質はいまだに信頼性が高く、他キャリアの「つながりにくさ」に悩まされていたユーザーにとって乗り換えは一考に値するだろう。
しかし、この流れに水を差しているのが6日に発表されたドコモの「ビッグデータ販売」がらみの騒動だ。発表によると、ドコモ利用者の年齢、性別、現在位置などの情報を基に場所や時間による人口の変動を推計。その統計データを企業、自治体、学術機関向けに10月1日から有料販売するとのことだ。例えば「○月○日○時台、○○駅周辺に20代の男性が○百人」といった形で提供される予定だという。情報は非識別化処理・秘匿処理され、個人情報ではなく数値のみの統計が提供される仕組みだが、一般ユーザーの拒否反応は強く、ネットでは一時炎上状態になって以下のような反発の声が多数書き込まれた。
「ドコモふざけるな!個人を特定出来ないから大丈夫なんてよく言えるな。個人情報を売らないって保証がどこにあるんだよ」
「家にいることが一番多いんだから、位置情報を提供されたら住所バレするだろ」
「JRがあれだけ叩かれてたのに、ドコモも勝手に客の情報で金儲けかよ」
ドコモのデータ販売は、個人情報ではなくあくまで「統計データ」。個人を特定した情報ではないのだが、発表や報道に説明不足の部分があったことも否めず、個人データが勝手に売られると思った人も多かった。2ちゃんねるに「ドコモが契約者の携帯番号・年齢・大まかな住所・生年月日等のデータを販売開始へ」といったスレッドが立ち、それをまとめサイトが拡散したことも勘違いを広める原因になったようだ。また、いくら非識別化処理したとしても「位置情報」を利用されることに嫌悪感を抱く人は少なくない。JR東日本がIC乗車券「Suica」の履歴情報を無断で外部に販売し、利用者からの批判を受けて大問題に発展したばかりだったことも、ドコモ炎上の要因になったといえる。
利用者の意思と関係なく統計データを無断で販売していたJR東日本とは違い、ドコモは自身のデータを統計から除外したいユーザーへの選択肢も用意し、携帯電話から「151」にダイヤルして手順を踏むことでオプトアウト(利用停止手続き)できる。
だが、それでもドコモは炎上してしまった。iPhone販売開始という“祭り”に影を落とすような騒動になってしまったのはナゼなのか。
「ユーザーへの説明が不十分ということに尽きる。今回も個人情報が売られると勘違いした人は多かったし、いくら個人情報ではないといっても、よく分からないままデータを外部に提供されたら気味が悪いのは当然。非識別化処理しているといっても、ユーザー側にしてみれば昨今相次いでいる個人情報流出事件などもあって、企業のデータ管理を信用しきれない部分がある。十分な説明でユーザーとの信頼関係を築き、そういった根本的な不信感を解消する努力をしなければ、今後も拒否反応は消えないでしょう」(代理店関係者)
今後はますます増加するであろうビッグデータ販売。目先の儲けに目を奪われ、ユーザーを置き去りにして信頼を失わないようにしてほしいものだ。(佐藤勇馬)